会長挨拶
第38期会長 会長就任にあたって
第38期会長 平田 和也
Inaugural Address by the President for the 38th Term
Kazuya HIRATA
このたび2026年8月7日に開催された可視化情報学会通常総会・臨時理事会におきまして,第38期の会長へ推挙頂き就任することになりました.身に余る光栄であると同時に,伝統ある本学会の舵取りを担うことに,身の引き締まる思いと,その重大な責任を痛感しております.会員の皆様のご期待に応え,本学会のさらなる発展に向けて全力を尽くす所存です.
人間の知覚のうち,約85%が視覚と言われています.本学会は,流体,熱,構造などの物理現象の視覚化から始まり,今日では計算科学,データサイエンス,医用画像,さらには人の心理的内面,情報デザインやアートに至るまで,「見えないものを見せる,分かりやすく伝える」という共通の価値観のもと,極めて多角的な発展を遂げてまいりました.諸先輩方が築き上げられたこの多様性と学際性こそが,本学会の最大の強みであり,誇るべき財産です.
現在,生成AIをはじめとする高度な計算技術の普及や,DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に伴い,私たちが扱う「データ」の量と複雑さは爆発的に増加しています.こうした時代において,複雑な事象を直感的に理解可能にし,新たな発見や意思決定を促す「可視化(Visualization)」の重要性は,かつてないほどに高まっています.科学技術の発展のみならず,社会課題の解決や意思決定の迅速化において,我々の果たすべき役割は無限に広がっています.まさに本学会が蓄積してきた知見と技術が,社会のあらゆる変革を支えるコア・コンピタンスとなる時代を迎えていると言えます.
このような変革期において,私は会長任期中,特に以下の3つの柱に注力して学会運営を推進してまいりたいと考えております.
・学際的探求と領域の拡大
従来の流体や固体,計測といった工学分野の可視化を深化させつつ,情報科学,データサイエンス,医療,さらには精神医学,心理学,人文学,社会科学やアート,デザイン領域との融合を一層加速させます.本学会には5つの研究会が活動しており,「可視化」という共通言語を通じて,多様な分野の専門家が集い,創発的なイノベーションが生まれるプラットフォームとなっています.また主催する可視化情報シンポジウムやJapanVis,その他協賛する多くの学協会行事において広く情報発信・収集を行い,分野横断的な連携による新たな知の創出を推進します.
・産官学連携の強化と社会実装の推進
数年ぶりの産業界からの会長就任ということで,基礎研究の成果を迅速に社会や産業界の課題解決へと結びつけるため,産官学のネットワークをより強固なものにします.企業会員の皆様のニーズを汲み取り,実社会の課題に根ざした共同研究や技術交流の場を積極的に創出してまいります.
・次世代の育成と国際発信力の強化
これからの可視化分野を担う若手研究者や学生,技術者が,自由な発想で挑戦できる環境を整えます.また,国際学会との連携をさらに密にし,日本発の優れた可視化技術や研究成果を世界へ向けて力強く発信していく体制を支援します.
フランスの作家マルセル・プルーストの言葉で「本当の発見の旅とは,新しい景色を探すことではない.新しい目を持つことである」.これは,一度その「新しい目(視点)」を手に入れてしまえば,世界そのものが塗り替えられ,以前の(平凡な)世界に戻ることはできなくなるという洞察かと思います.可視化情報学会が,会員の皆様にとって魅力的で刺激的な研究活動の場であり続け,同時に広く社会に新しい目を提供し,確かな価値を還元できる組織であり続けるよう,理事・監事のメンバーをはじめ,会員の皆様と一体となって歩みを進めてまいります.