会長挨拶
第37期会長 会長就任にあたって
第37期会長 伊藤 貴之
Inaugural Address by the President for the 37th Term
Takayuki ITOH
2025年8月5日に開催された可視化情報学会通常総会・臨時理事会におきまして,第37期の会長に推挙頂き,就任することとなりました.
心理学者のカール・ユングは「人間の出会いは化学物質の接触に似ていて、反応があれば両者は変容する.」と発言しています.私は,可視化情報学会こそが,これを実践できる場の一つではないかと考えます.私にとって可視化とは,縦割り化された諸般の学問(理学・工学・情報学・人文科学・社会科学…)を横断する学際的な展開に貢献できる技術であると考えています.私自身は文化情報工学科という新しい学科で人文科学と情報学の接点を探り,情報学を駆使した可視化によって人文科学の新たな一面を見せようとしています.このように,可視化は複数の学問を橋渡しできる技術であると考えます.それを反映するかのように,本学会は理学・工学・情報学・その他の多くの分野から研究者が集まっており,それが本学会の大変ユニークな点であると考えています.このような本学会ならではのユニークな研究成果をさらに積極的に発信できないか,あるいは多様な学問に従事する会員間の新たな出会いによってさらに多くの融合的な研究成果を創出できないか,といった点について会長として1年間検討していきたいと考える所存です.会員の皆様には大変お世話になりますが,なにとぞよろしくお願いいたします.
私の本学会との出会いは,2009・2010年のビジュアリゼーションカンファレンス実行委員長の就任にさかのぼります.その後,2017年~2021年に務めた論文集(和文誌)編集委員長,2021・2022年に務めた総務委員長,2023年から継続して就任しているJournal of Visualization編集委員長,2024年の第1回JapanVis実行委員長などの経験を経て,このたび会長に推挙頂きました.このような思い出深い学会の会長の役を仰せつかることに深い感慨を抱いております.
2025年は学会発足(1981年)から45年目,法人化(1990年)から36年目となります.多くの国内学会が規模縮小を強いられる時代の流れの中で,本学会もピーク時に比べれば会員数こそ減っていますが,本学会が開催する国際会議・国内会議は活況な状況が続いています.昨年開催された第52回可視化情報シンポジウムは講演数275 件,参加者数500名弱という大盛況ぶりでした.また本学会が運営に関わるISFV(Int. Symp. on Flow Visualization),ISPIV(Int. Symp. on Particle Image Velocimetry),ASV(Asian Symp. on Visualization), ISUD (Int. Symp. on Ultrasonic Doppler methods for fluid mechanics and fluid engineering)などの各種国際会議はいずれも盛況な状況を持続しています.さらに昨年は情報系の国際会議 JapanVis が発足するなど,本学会の国際活動はますます幅を拡げています.
第37期は可視化情報シンポジウムが休会となりますが,昨年の第52回可視化情報シンポジウムの熱気を忘れないようにしながら,第53回シンポジウムの準備に努めます.また国際会議についても,さらなる発展を目指します.学会に参加して発表する経験,また学会参加を通して得られる人脈や現地体験が,学生を含む多くの参加者にとって有益な機会となるように努めます.
加えて本学会は,和文論文誌と英文論文誌(Journal of Visualization)の両方を発行しており,さらに5つの研究会を運営しています.このような多彩な研究発表の機会をさらに盛況にすべく,運営の活性化に努めます.
また本学会では現在,学会誌をはじめとする知的資産の電子化を進めています.ペーパーレス化などの資源節約の流れや,コロナ禍後のライフスタイルの変化もあって,多くの学会が紙媒体から電子媒体へ情報共有手段の移行を進めており,本学会もその時流に乗ろうとしている段階にあります.また近年の翻訳技術の進歩により,日本語の論文や記事を読むことが容易になっていることから,海外諸国からの注目を高める手段としても知的資産の電子化への期待の一面があります.本学会の知的資産の電子化が,会員の皆様への新たなサービス向上と,日本の可視化関連の研究成果の注目度向上につながるように,検討と運営を進めてまいります.
会員の皆様におかれましては,いっそうのご支援とご協力を心よりお願い申し上げます.