第34期会長 新関 良樹
Inaugural Address by the President for the Thirty-fourth Term
Yoshiki Niizeki
2022年8月8日,ハイブリッド形式にて開催された可視化情報学会通常総会および臨時理事会におきまして第34期の会長に推挙され,就任することとなりました.
本学会は1973年(昭和48年)に開催された可視化シンポジウムを起源とし,その後1981年(昭和56年)に発足した「流れの可視化学会」をルーツとしています.可視化情報学会では1977年(昭和52年)に第1回流れの可視化シンポジウムを開催するなど,精力的な活動が行なわれました.発足より「流れの可視化」が活動の柱でしたが,活動領域の拡大に伴い,1990年(平成2年)には,「可視化情報学会」と名称を変え,社団法人化し,さらに2011年(平成23年)には一般社団法人「可視化情報学会」へと移行して現在にいたっています.
本学会は本年で,流れの可視化学会から通算43代,法人化後34期となりますが,可視化シンポジウムは今年2022年がちょうど第50回で,PSFVIP13と一部合同開催となるなど節目の年にあたります.諸先輩方にはそれぞれ深い想いがある本学会の会長就任は,ひときわ感慨深く,非常に光栄に思うとともに,その重責に身が引き締まる思いです.
本学会が元々ベースとしていた流れの可視化は,今日では流れ場の様子を単に可視化するだけではなく,速度や温度などを非接触で定量的に,しかも多次元・非定常で計測する方法に発達をしてまいりました.現在では,機械・航空・宇宙・土木・建築・海洋・気象などの理工学分野だけではなく,医学・農学・環境科学などさまざまな分野で活用される有力な研究開発手法として活用されています.
さらに「可視化情報」はより広い範囲へと拡大・発展を続けており,物理現象だけではなく,社会科学,人文科学,アートなどにも活用されるようになっています.特にビッグデータと呼ばれる膨大な情報を取り扱う様々な現象の把握・認識には欠かせない技術となっており,近年では深層学習などの統計的機械学習などを取り込み人口知能との融合・応用についても積極的に研究がすすめられています.
日本学術会議においては,本学会第26期会長の小山田耕二先生らによって立ち上げられた「科学的知見の創出に資する可視化分科会」を契機に,横断的学術分野としてのプレゼンスが示し続けられています.
また,仮想現実(VR)/拡張現実(AR)からさらにXRへと発展してきていますが,このような技術についても「可視化情報」は深い関わりを持っています.
2019年にCOVID-19が発生して以来,すでに2年半以上の長きにわたって自粛活動が続いています.その中で我々は遠隔による知的作業の実施などについて,様々なノウハウを身に着け,遠隔のメリットを発見する一方,問題点も明らかとなってきました.アフターコロナで期待される遠隔とFace to Faceをうまく両立させた社会の実現にも「可視化情報」技術は欠かせないものと考えています.
このような状況から,本学会の役割はますます重要となっているものと考えていますが,多くの学会がそうであるように,残念ながら本学会においても会員数の減少には歯止めがかからない状況が続いています.この傾向を改めるためには,会員にとっての魅力度を継続して向上させることが重要と考えます.
本学会は,和文論文集,Journal of Visualizationという二つの論文集を発行するとともに可視化情報シンポジウムとビジュアリゼーションワークショップの二つの国内大会や各種の講習会の開催,研究会などの取組みとともに多くの国際学会にも本学会のプレゼンスを強くアピールし続ける実績を有しています.これらについて継続的に取り組むとともに,これらをコアとしてさらに魅力度をアップするためには,会員の皆様の御協力が不可欠と考えています.よろしくお願い申し上げます.
このように,学会としての活動を持続的に発展させつつ,魅力度の向上をはかることで会員の確保に努める所存ではありますが,一方で短期的に会員数の大幅増が望めない中,現在の学会の身の丈にあった規模として見直す部分があれば対応したいと考えています.これらを含めて,可視化情報学会の活動をより活性化させるためのビジョンの策定と,できるだけの具体的施策の実施をはかってまいりたいと思います.会員の皆様の御支援とご協力を何卒よろしくお願い申し上げます.
(徳島文理大学理工学部機械創造工学科 教授)